大江戸ガーディアンズ
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「いつまでも、呆けた(つら)(さら)すな」

突如、物陰から男の声がした。

与太は飛び上がるほど驚いた。


「——みっともないぞ、与太」

「な、なんだとっ」

与太が勢いよく振り向くと……

着流しに黒羽織、腰には長刀・短刀の二本差し、さらに裏白の紺足袋(たび)雪駄(せった)履きの姿の男が、其処(そこ)に立っていた。

「し、島村の旦那……いつの間に……」

北町奉行所 隠密廻り同心—— 島村 広次郎(ひろじろう)だった。


「び、ひっくりさせねぇでくだせぇよ。
藪から棒に現れるもんだから……
てっきり、吉原の揚代(おあし)のために独り歩きの男を狙う、追い剥ぎか何かだと思っちまいやしたぜ」

与太は照れ隠しもあって軽口を叩いた。

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