大江戸ガーディアンズ
気詰まりだった染丸の稽古を終え、羽衣が与えられている座敷でしばし休んでいると、和佐が微笑みながら云った。
「……いつも何でも卒なく熟すと思うていたゆえ、あのような義姉上のお姿は意外でござった」
『吉原での義姉上をお護りするがためにも』の言に違わず、和佐は懐刀の匕首の忍ばせて、美鶴の行き先々にぴたりとついてきて「護って」くれている。
厠にまで、ついてこようとするのには閉口してしまうが……
番頭新造に「変装」した今の和佐は地味な着物姿ではあったが、歳よりも幼い面立ちにもかかわらず子を二人産んだ女の「色香」もしっかりと漂わせていた。
久喜萬字屋のお内儀であるおつたなぞ、今すぐにでも羽衣と同じ「昼三」として売り出したい、と歯噛みしているくらいだ。
よくもまあ、かように麗しき妻女を吉原に「囮」として差し出せるものだと……
流石は、生まれもっての武家の男だと……
美鶴は和佐の夫である本田 主税の器の大きさに、心の底から感服した。
そして……
——毎日、あのお方と瓜二つの御尊顔を見られることが、なんと心強いことか……
「早う松波の御家に帰って、姑上様にお会いしとうござりまする……」