大江戸ガーディアンズ
畳に敷かれた朱の毛氈の上に並んだ数々の品々から、美鶴は一本の筆を手にした。
「さすが、舞ひつるだな。相変わらず御目が高ぇ」
声がした方に顔を向けると、彦左がいた。
目が合うと、にっこりと笑う。
子どもの頃より見慣れてきた、彦左の邪気がない笑みだ。
吉原の妓の胎から生まれた子がすぐに預けられる「子ども屋」にいた時分から見知っているのだ。
父親が武家であろうことも同じである。
美鶴がいた頃は、男衆とは名ばかりで、下っ端の使いっ走りをさせられていた彦左であるが、あれからすっかり腕を上げたらしい。
今は化粧にせよ着付けにせよ、階上の遊女たちの指名を受けるほどになっていて驚いた。
——もし、男に生まれていたならば……
わたくしも……彦左のごとき生き様になったのであろうか……