大江戸ガーディアンズ

おすての故郷(くに)は秩父だと云う。

十人もの子だくさんの水呑(みずの)み百姓の家で、下から二番目に生まれたおすては、二親(ふたおや)にとっては「要らない子」であった。

ゆえに、「お捨て」と名付けられた。

夜明けから日が沈むまで畑仕事をして、日が暮れてからも夜なべして働けども、負い目(借金)ばかりが膨れ上がり、ついに上の娘から順に女衒(ぜげん)に売っていく羽目になってしまった。

そして、とうとうおすての番になり、田舎ではなかなかの器量良しと云われていたため、姉たちとは違い吉原に連れてこられた。
今から半年前のことである。

されども、おすては十五にしては小柄で瘦せぎすのせいか、まだ初潮が来ていなかった。

月の(さわ)りの来ない、まだ女とは云えぬ「子ども」を見世には出せない。

見世を差配する内儀(おかみ)は、器量の悪くないおすてを「振袖新造(ふりそでしんぞ)」にさせて売り出そうとした。

< 19 / 316 >

この作品をシェア

pagetop