大江戸ガーディアンズ
「ほんに……喰えねぇお内儀だぜ」
兵馬は盛大に舌打ちした。
——ま、そんくれぇ「舞ひつる」だった美鶴を大事にしてくれてた、っ云うこったけどな。
「そんで、今宵のことでやすが……」
与太は茶の支度をしながら、何でもないふうを装って尋ねた。
「——『三会』ってこってすかい」
廓では、客が初会、裏、三会、と三度通って「馴染み」にならないと「床入り」できぬという仕来りがある。
ただ、さようなことは二階の「部屋持ち」以上の「遊女」たちの話であるが……
「そうなるな」
兵馬は内心を悟られないように、敢えてあっさりと答えた。
確かに、青山緑町の御前様の「御曹司」として久喜萬字屋へ登楼るのは今宵で三度目である。
本来であらば、ようやく馴染みとなって「床入り」が叶う夜である。
——ならば、今宵……美鶴と……
「あの夜をやり直せる」かもしれぬ。