大江戸ガーディアンズ

「……胡蝶、おいでなんし」

羽衣は襖の向こうに声を掛けた。


まもなく、胡蝶(・・)が現れた。

羽衣の大きな髪飾りとその本数に負けず劣らず、鼈甲の笄に珊瑚の簪がその豊かな黒髪に何本も挿し込まれている。

着物も幾重にも重ねられていて、もう「赤いぴらぴら」と称される真っ赤な振袖を(まと)った「振袖新造(ふりしん)」は何処にもいない。

其処にいるのは、見紛うことなき「大籬の昼三」——否や、吉原の最高位「呼出」と云ってもよかった。


「主さん、胡蝶でなんし」

さように名乗ると、胡蝶は艶やかに微笑んだ。

< 198 / 316 >

この作品をシェア

pagetop