大江戸ガーディアンズ
「……胡蝶、おいでなんし」
羽衣は襖の向こうに声を掛けた。
まもなく、胡蝶が現れた。
羽衣の大きな髪飾りとその本数に負けず劣らず、鼈甲の笄に珊瑚の簪がその豊かな黒髪に何本も挿し込まれている。
着物も幾重にも重ねられていて、もう「赤いぴらぴら」と称される真っ赤な振袖を纏った「振袖新造」は何処にもいない。
其処にいるのは、見紛うことなき「大籬の昼三」——否や、吉原の最高位「呼出」と云ってもよかった。
「主さん、胡蝶でなんし」
さように名乗ると、胡蝶は艶やかに微笑んだ。