大江戸ガーディアンズ
🏮 壱の巻「心意気」
〜其の壱〜
「近頃、吉原にて次々と遊女の美髪を根元より切りたる『髪切り』現れりーッ」
讀賣(瓦版)の声が、辺り一面高らかに響きわたる。
往来を行く老いも若きも男も女も、思わず何事かと振り向いた。
処は、千代田のお城の卯の方に位置する伝馬町。
その昔、三代の公方様(徳川家光)の御沙汰によって全国津々浦々のお殿様たちが年に一度、江戸と国許とを往復することになり、日本橋を起点に東海道・中山道・日光街道・奥州街道そして甲州街道——いわゆる五街道が整えられた。
それに伴い各地に宿場町ができて、街道を行き来する馬の本拠となったのが、日本橋にほど近い此の地・伝馬町だ。
「狐か……はたまた物の怪、或いは妖の仕業かーッ」
晴れわたった江戸の空に向けて、紙の束が高く掲げられる。
すると、群がる人々が我先にと奪うように求め、讀賣の手からみるみるうちになくなっていく。
与太は、まるで親の敵でも討つかのごとき形相で、その成り行きを見ていた。