大江戸ガーディアンズ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
もうそろそろ、引手茶屋に「主さん」を迎えに行った羽衣と舞ひつる改め胡蝶が戻ってくる頃である。
「舞ひつる姐さ……いや、胡蝶姐さん、綺麗だった……なんし」
羽風はなにか話すたびに周囲の者から言葉遣いを直されるゆえ、怖くなってますます廓言葉から遠ざかっている。
「あっ、彦左は今夜、玉菊姐さんの指名を受けてたんじゃ……」
「いいんだ」
彦左は羽風の言葉を遮った。
最高位の呼出がいないこの見世で、羽衣と同じ昼三として次代の呼出を狙う玉菊の「指名」は、確かにありがたいとは思うが……
「今宵は、おまえにとっては本当の意味での『初見世』だかんな」
だからこそ断って羽風の化粧と着付けをしていた彦左は、思わずため息を吐いた。
——これでは、たとえ一階の廻し部屋でも務まるかどうか……
もしもこの久喜萬字屋で見放されたら、負い目(借金)ごと中見世や下見世に売っぱらわれてしまう……
そして、どんどん負い目ばかりが嵩んでいき、いつの間にか十年経っても年季が明けなくなって、しかも一番劣悪な切り見世に追いやられてしまう……
もうそろそろ、引手茶屋に「主さん」を迎えに行った羽衣と舞ひつる改め胡蝶が戻ってくる頃である。
「舞ひつる姐さ……いや、胡蝶姐さん、綺麗だった……なんし」
羽風はなにか話すたびに周囲の者から言葉遣いを直されるゆえ、怖くなってますます廓言葉から遠ざかっている。
「あっ、彦左は今夜、玉菊姐さんの指名を受けてたんじゃ……」
「いいんだ」
彦左は羽風の言葉を遮った。
最高位の呼出がいないこの見世で、羽衣と同じ昼三として次代の呼出を狙う玉菊の「指名」は、確かにありがたいとは思うが……
「今宵は、おまえにとっては本当の意味での『初見世』だかんな」
だからこそ断って羽風の化粧と着付けをしていた彦左は、思わずため息を吐いた。
——これでは、たとえ一階の廻し部屋でも務まるかどうか……
もしもこの久喜萬字屋で見放されたら、負い目(借金)ごと中見世や下見世に売っぱらわれてしまう……
そして、どんどん負い目ばかりが嵩んでいき、いつの間にか十年経っても年季が明けなくなって、しかも一番劣悪な切り見世に追いやられてしまう……