大江戸ガーディアンズ
ハッとして振り向くと、彦左がいつの間にか匕首を手にして、虚な目をしてこちらを見ていた。
「ひ、彦左……」
なんだか様子かおかしいことに気づいて、咄嗟に逃げようとした。
だが、腕を取られて力いっぱいぐいっと引き寄せられる。
せっかく結うてくれた髪も、着付けてくれた着物もぐずぐずに崩れてしまっている。
しかも引っ張られたときに、びりりっと厭な音がしたから裂けてもいるだろう。
彦左は細っこいように見えて、見世の用心棒みたいなこともしている。
それでなくとも小柄なおなごではとてもとても敵わなかった。
「や、や、やめ……」
叫び声をあげれば、きっとだれかが来てくれる。
分かっているのに、まるで喉を締め付けられたかのごとく微かな声しか出ない——