大江戸ガーディアンズ
与太がおすてと出会った切欠は「御用向き」であった。
南町奉行所のある役人の子息から、ある日忽然と消えたとか云う振袖新造の「人探し」を頼まれたのだ。
されども、魑魅魍魎が現の世で縦横無尽に跋扈する吉原のことだ。
とある大名の名までたどり着いた処で、いきなり「待った」が掛かってしまった。
結局のところ……それきり有耶無耶となった。
ゆえに、未だその振袖新造は行方知れずのままだ。
そして、その「消えた振袖新造」がいたのが、おすてが下働きをしている久喜萬字屋だった。
初めは、いつもおなご相手にやっているように、おのれの「見てくれ」を利用して取り入り、知っていることを吐かせて「上」に伝えたあとは、とっととズラかるつもりだった。
どうせ、相手は「吉原の妓」なのだ。
向こうだって「商い」のために、色目を使い手練手管を駆使して与太のことを惑わしてくるに決まっている、と……
久喜萬字屋の裏手で見かけたおすてに声をかけたのも……
——この野暮ったい田舎くさいおなごだったらよ……ちょいと甘ぇ顔をすりゃあ、すぐに口を割るだろよ。