大江戸ガーディアンズ
「落ち着け……なにが『だめ』なのだ。
『あの方』とはだれのことだ」
兵馬は彦左に尋ねた。
だが……
——なんだか、様子がおかしいぞ。まるで人が変わったみたいになっておる。
そして、他の者を三畳間から出して、我が身一人だけが残るように謀る。
——できれば、出入り口の板戸を閉めて、あいつを閉じ込められれば……
江戸の天下を騒がせてきた、あの「髪切り」を「生け捕り」できる。
それから、南北の奉行所を挙げて、何のためにかようなことをしでかしたのか、吟味し尽くすのだ。
「『あの方』のお名前を出すなんて、この下賎なおれができるわけないだろう」
彦左はうっとりと、まるで歌うがごとく「あの方」のことであろうか、ぶつぶつと語り出した。
されど、はっきりとせず、処々しか聞き取れぬ。
「なのに……『あの方』とおれは……血が繋がってんだぜ……」
——血が繋がっている、だと……