大江戸ガーディアンズ

「……そうだ……そうなんだよ……
『あの方』にとって邪魔者は……
消えちまえばいいんだ……」

虚な目で何やらぶつぶつ唱えていたはずの彦左の目が、また光を取り戻している。

だが、それは澱んだ光で——やはり、尋常ではなかった。


彦左の匕首が、兵馬めがけて振り下ろされた。

女たちの悲鳴があがる。


されど、すんでのところで、兵馬は(かわ)した。

「皆の者、下がっておれ」

形勢を整えた兵馬は、今度こそ、迷わず腰の太刀を抜いた。

匕首など、難なく兵馬の刀によって()ねられた。

納戸の方へひらりと飛んでいき、扉の板戸にぶすり、と刺さる。


「だ、旦那さま……」

安堵した美鶴が涙目で夫を見た。

兵馬も妻に微笑み返す。

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