大江戸ガーディアンズ

「おい、待てっ」

兵馬は腕を伸ばして彦左の(たもと)をがしっと掴んだ。

「そうは問屋が卸すかよっ」

そのまま引き寄せ、後ろから羽交締めにする。


どうやら、甘く見過ぎたようだ。

相手は思ったよりもずっと手段を選ばぬ狡猾さを持ち、さらに身が敏捷(はしか)い。


(しも)はあらぬか」

美鶴に云うと、帯を結ぶのに使っていた紐を一本解いて兵馬へと渡す。

遊女の着物では数えきれぬほどの紐を使うため、一本くらいなんの造作もない。

兵馬は彦左を後ろ手にして、手早く縛り上げた。


その間に近江守は近侍たちの「我々が……」と云う声をいっさい聞かずに羽衣を抱きあげ、足早に出て行った。

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