大江戸ガーディアンズ
与太はあまりの驚きに、咄嗟に声も出ないくらいだった。
「早速、吟味に取り掛かるゆえ、某は奉行所に戻る。
それから、伊作の女房もこの件に絡んでおることがわかった。
おまえは、その女房も知っておるか」
「えっ……伊作親分までが……」
また言葉を失いかけたが、与太だって「御用聞き」の端くれだ。腹にぐっと力を込める。
「伊作親分よりずいぶん歳が下で、一体親分の何処に惚れたんでぇ云うぐらい品のあるおなごでやす。
三ノ輪の店で扱ってる物が、数は少ねぇけど珍しいってんで、玄人の妓たちに評判でさ」
そして、うーんと腕を組んで考え込むも……ぱっと顔を上げた。
「あっ、話したことは数えるほどでやすが、そういや、ちょっと訛りのある女でござんした。
確か……芸州……安芸国の出だっ云っておりやした」
松波は深く肯いた。
「相分かった。吟味には与太、おまえも加わってもらうからな。
……ところで、何処かで馬は手配できぬか」
与力は江戸市中での馬の騎乗が認められていた。
駕籠なんぞでは時の間に合わない。
「あっ、そんならちょうど今、世話をしてた処でやんす。ただ、おいらは鞍が……」
「構わぬ。某が付ける。厩へ案内せよ」
それから、松波は彦左を駆けつけた部下の役人に引き渡すと、慌ただしく奉行所へ向かう馬上の人となった。