大江戸ガーディアンズ
🏮 巻末「仕舞」
〜其の壱〜
「……旦那さま、お帰りなされませ。
夕餉はお召し上がりと伺っておるゆえ、御酒にてござりまする」
美鶴は座敷の入り口できちっと正座し、平伏した。
「あぁ、入れ」
松波 兵馬は妻女を座敷の中へ招じた。
「御無礼仕りまする」
美鶴は嫋やかに立ち上がり、酒を携えて座敷に入ってきた。
そして、酌をして兵馬がくっと一杯呑って人心地ついた頃、尋ねた。
「……御前様は何と」
本日、兵馬は広島新田藩 三代藩主である浅野 近江守に招ばれて、青山緑町にある御屋敷へ参っていた。
先般より巷を賑わせてきた「髪切り」に関して、近江守の「預かり」になっていた一部始終を聞いてきたのだ。
「今から申すことは他言無用であるぞ。
必ず、墓場まで持って行け。よいな」
美鶴はしかと肯いた。
平生は町家の砕けた言葉である夫が、武家の言葉で話したときから判っていたことだ。