大江戸ガーディアンズ
「ある日、奥方様が特に傾倒していた祈祷師が、御子が儚くなったのは羽衣に因があると云いだしたらしい。
それで、羽衣の髪を燃せば羽衣の生命力が失せて、すべてはうまくいくようになると」
「まぁ、さようなことで生命力が……
なんて怖ろしい……」
美鶴の顔がさーっと色を失くす。
「迷信だ、信じるな。
さようなことができるはずがないであろう。
祈祷料をせしめるための方便だ」
兵馬は一刀両断した。
「では……ほかの見世の妓たちの髪はなにゆえ断ち切られたのでござりまするか」
美鶴は首を傾いだ。
「其れが目眩しだと云うのだ。
いきなり羽衣の髪をばっさりとやってしまえば、羽衣に恨みを持つ者、となり奥方様にたどり着く」
「さすれば、髪を切られた妓は切られ損と云うわけでござりまするね……」
美鶴はため息を吐いた。
「皆それぞれ、彦左が迎えに来るのを首を長うして待っておったであろうに……」