大江戸ガーディアンズ
久喜萬字屋の火事の折に、彦左は忽然と消えた。
あないに町方役人たちに囲まれていたと云うのに、いつの間にかいなくなっていた。
「生け捕り」にして配下の同心たちに引き渡し奉行所へ向かった兵馬の怒りは並々ならぬものであった。
しかし、奉行所の「失態」は表には出ない。
「咎人の彦左は火事場に取り残されて死んだ」と云うことになっている。
ところが、すっかり焼き尽くされた久喜萬字屋の跡地で遺されたものは何もなかった。
ゆえに、巷では今でも「やはり狐か……はたまた物の怪、或いは妖の仕業か」と噂していた。