大江戸ガーディアンズ

「ひ、彦左(ひこざ)……」

おすてが、じりっと後退(あとずさ)った。


久喜萬字屋の裏木戸に、与太と似た(よわい)の男が腕を組んで立っていた。

しかも、当代随一の女形(おやま)の歌舞伎役者・坂東志うかもかくやと云うくらい細面(ほそおもて)の色男だ。


与太が、ちっ、と舌打ちする。

——あぁ、またこいつが来やぁがった……

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