大江戸ガーディアンズ

「加代というおなごも、彦左を待っておるのでござりましょうか。それとも……」

「加代をお縄にすらば奥方様の悪行にたどり着くゆえ、町方では捕縛できぬ。
よって、無罪放免となるが、御前様は故郷(くに)に戻すと仰せであった。
亭主の伊作にはかなり厳しく吟味を取り(おこな)ったが、加代がやったことについてはなにも知らず、それどころか加代とはできればこれからも夫婦でいたいとも申しておった。
されど、今回の件で、伊作は奉行所に十手を返すと申しておる。
加代の方は伊作が岡っ引きだと知って奉行所の動きを得るために所帯を持ったと申しておったゆえ、すんなり故郷に帰るであろう」


「奥方様は如何(いかが)なされるのでござりましょうか」

「表沙汰にならば、御公儀よりお咎めがあるやもしれぬゆえ、病気平癒のため国許(くにもと)の御実家預かりと相成(あいな)った」

実の処は「永蟄居」——格子の嵌まった座敷牢に移され、其処から出されるときは死んだときだ。


「彦左も、加代と云うおなごも、我が人生を棒に振ってまで心酔して云いなりになるほどのお方でござりますのに……」

「加代のことはわからぬが……彦左は『血の繋がった家族』を欲していたのではあるまいか」

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