大江戸ガーディアンズ

さように云うと、美鶴は袖先で口元を隠して笑い出した。

「な、なんだ、何がおかしい」


「わたくしはもう松波家の者にてござりまする。
確かに、前に広次郎殿からお話がござったが、向こうもいつまでも人の妻のことなぞ思うてはおりませぬ。
……あぁ、おかしゅうござりまする」


——いや、おかしゅうはないぞ。

あの同心は、今でもおまえを思い続けてると思うが……


「とにかく、旦那さま」

美鶴は居住まいを正し、表情を改めた。

「末長く、よろしゅうお頼み申しまするゆえ」

そして、再び三つ指ついて平伏した。

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