大江戸ガーディアンズ
〜其の弐〜
和佐は、畳に額を擦り付けて平伏していた。
「旦那さま、たいへん申し訳のうござりまする」
目の前の夫は、今までに見たことのないほど立腹していた。
「『髪切り』の捕物のあとは何処も忙しゅうしておったものゆえ、本日、久しぶりにおまえの兄とすれ違って話をしたならば……」
和佐は頭を下げたままだ。
「子ども二人と松波の実家で厄介になっているものとばかり思うておったのに……
まさか、おまえが自ら『囮』となって……
よ、吉原の……く、廓なんぞに入っていたとは……」
夫の本田 主税は奉行所勤めといえども、松波の家とは違い市井に出て町家の者と関わることがないゆえ、「吉原」だの「廓」だのは話にしか聞いたことがないのだ。
「もともと覚悟の上で、しかも兄に無理を申して参った次第でござりまする」
和佐はようやく面を上げて夫を見た。
「……さすれば」