大江戸ガーディアンズ

「いつの話だ。とっくの昔に()な嫁入っておるわっ」

——いかん。

主税はしばし目を瞑って気を落ち着けさせた。


再び、目を開ける。

「……それにおまえは『一つだけ』と申したが、千晶の分と太郎丸の分で『二つ』になろうが」

愛娘の千晶が聞き分けのないことを云う際に使う猫撫で声で説き伏せる。


「子どもを連れて参る、と云うことで『一つ』にてござりまする」

されど、和佐は返す刀で返り討ちにする。


「お約束いたしまする。たとえ本田の御家(おいえ)を出たとしても、子どもたちを立派に育て上げ、わたくしたちは必ず幸せになる、と云うことを……」

和佐は遠い目をする。未来を見つめていた。


——千晶と太郎丸がいれば、わたくしは生きていける……

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