大江戸ガーディアンズ

あの火事の日、炎と煙の久喜萬字屋からおすてを()ぶって出てきて以来、与太はおすてと会っていない。

しっかり見張っていたはずの奉行所(おかみ)の町方役人がちょいと目を離してしまったのであろう、その隙に彦左が逃げてしまった、とえらい騒ぎになっていた。


与太は命からがら建物から出てきたってのに、目立った怪我がないと(わか)るやいなや、中で彦左を見たからとすぐに駆り出された。

おすては島村に預けざるを得なくなり、そのあと無事久喜萬字屋の者に引き渡されたそうだ。


髪をざっくりと断ち切られたことの他は特に変わったところはなかったらしく、後日島村から聞かされた与太は心底安堵した。


結局のところ、与太が炎と煙の立ち込める久喜萬字屋の中で会ったのが彦左を見た最後と云うこともあり……

奉行所は町家に対して……

「彦左は廓の妓を助けるために、奉行所の町方役人のが止めるのも聞かず振り切って見世の中へと入り、逃げ遅れて焼け死んでしまった」

と云う噂を流した。

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