大江戸ガーディアンズ
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此の縁談を持ってきた水茶屋・嘉木屋の主人(あるじ)夫婦が仲人と云うことで、奥の座敷の間を使うこととなった。

酒は店の方で支度してくれ、料理は豪勢に浅草の料理茶屋から取り寄せることと相成(あいな)った。


先方も堅っ苦しいのは御免だと云うので、与太が(まと)うのは母が昨日損料屋で見つけてきた、まだ真新しく見える江戸小紋は万筋の小袖だ。

町家の(もん)は新品なんざ無用の長物だし、綺麗(きれぇ)な晴着なんざ滅多と着る機会はないゆえ、損料屋でこましな古着を借りて返してまた借りて、の繰り返しだ。


「……御免なすって」

父母と三人で店の暖簾を(くぐ)れば、

「まぁまぁ、本日はお日柄(しがら)も良く、ほんに良うござんした」

と、嘉木屋のお内儀が愛想よく迎える。


与太は店の中を見回した。

いつも足洗いの桶を持ってすぐにやってくる、おるいがいない。

——あぁ、やっぱりそうか……


先達(せんだっ)て、与太は此の店のお内儀から『おるいとのことを考えてくれ』と云われていた。

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