大江戸ガーディアンズ
「……ちょいと、待っとくれよ」
見世の裏口へ向かって歩き出した二人を、与太は引き留めた。
まだなにか、と訝しげに彦左が振り向く。
見世の用心棒ではないとは云え、荒くれ者の客がやってきた折には「男手として」応じなければならぬことがある。
ゆえに、彦左には剣術にも柔術にもそれなりの「心得」があった。
それを知るおすてが、おろおろしながら与太と彦左を交互に見る。
されども、与太は平気の平左で、
「この間から『髪切り』の野郎に、吉原の大見世ばっか狙われてっからよ。
……久喜萬字屋はよ、大丈夫なのかと思ってさ」
と二人に尋ねた。
本日、与太が吉原にやって来たのは、おすてのような見世の者から少しでも「髪切り」のことについて探るためである。
何の手掛かりも掴めぬまま、尻尾を巻いて伝馬町へ帰るわけにはいかない。