大江戸ガーディアンズ
「おらぁ、舞ひつる姐さんはきっと何処かで元気でいなさる気がするだ……する『なんし』」
すっかりお故郷の方言になっていたおすてだが、ようやく気がついたらしく、あわてて言い直している。
「おすての云うとおりだ。
それに……おいらはまだ、『振袖新造探し』を諦めちまったわけじゃねえぜ」
与太は懐手をして云った。
「人一人の生き死に関わることかもしんねえってのによ、『へぇ、さいでやんすか』っ云って放っぽれるかってんだ」
彦左の切れ長の目が、すーっと見開かれた。
まさか『上からのお達し』を聞かぬ岡っ引きがいるとは——と思った。
今まで岡っ引きなど、町家風情のくせに奉行所の威を借る手先だと信じて疑わなかった。
「きっと与太さが見つけてくれ……なんし。
したらまた、舞ひつる姐さんに会える日が来る……なんし」
それは、おすての願いでもあった。
田舎から出てきて吉原に不慣れなおすては、見るに見かねたのであろう舞ひつるに、なにかと気にかけてもらっていた。
気位の高い「吉原育ち」は、さようでない「田舎者」を小馬鹿にし蔑むことが多かったが、舞ひつるに限ってはまったく違った。
美しいのは姿かたちばかりでなく、その心持ちもだった。
だからこそ、おすては久喜萬字屋で口止めされている話を与太にしたのだ。