大江戸ガーディアンズ
「おめぇさんが来なすったのがいくら御用向きだっ云っても、おすてと二人っきりで会うってぇのは別の話だ。
今まで会ってた云うこった、見世にゃ黙っておきやすが、金輪際勘弁しておくんなせぇよ」
常々、もし与太と顔を合わせた暁にはしっかりと「釘を刺しておかねばならぬ」と思っていたに違いない、と云う彦左の口振りであった。
「彦左っ、与太さは岡っ引きだけじゃのうて鳶の火消しもなさる立派な御仁だべぇ。
おらたちゃあ、なぁーも間違いになるようなこっなど……」
彦左はその声を聞くことなく、おすての袂を掴むとぐいと手許に引き寄せた。
「さ、行くぞ……そんじゃあ、御免なすって」
そして、見世の裏口へと足先を向けた。