大江戸ガーディアンズ

町家や百姓などを一太刀(ひとたち)できる「切り捨て御免」は、いくら武家といえども正当な理由(わけ)なしには滅多なことでは抜けぬ、まさに「伝家の宝刀」ではある。

無闇矢鱈(むやみやたら)に使おうものなら、町家相手なら「打ちこわし」、百姓相手なら「一揆」と云う「仕返し」が待っている。

さすれば、切り捨てた武家は「腹」を差し出して「事」を収めざるを得なくなる。

とは云え——武家に(ゆる)されていることに違いはない。


「す、すいやせん、お武家の旦那。
おいらは、ちょいと松波様んことに野暮用があって、今(けぇ)(ところ)でやんす。決して怪しい(もん)では……」

与太は声を励まし早口で告げた。

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