大江戸ガーディアンズ

「おまえは——」

武家の男が問うた。

「町火消し伝馬町・は組に属す、鳶の与太で間違いないな」

いきなり名指しされ、与太は目を見開いた。

どうやら、目の前の武家の男は与太のことを狙ってやってきたようだ。

もしかしたら、ずっと跡をつけてきたのかもしれない。

それに気づかなかったと云うことは……相手はかなりの「手練(てだ)れ」なのだろう。

相対(あいたい)した今もまったく隙がなく、与太が逃げ出すそぶりを見せようとものなら、それこそ即座に叩っ斬られそうだ。


——しくじったな……

与太は心の中で舌打ちした。

されども、いつまでもかようなままではいられない。


「……へぇ、いかにもおいらは与太でさ。
そいで旦那、藪から棒に一体(いってぇ)おいらに何のご用でござんす」

(はら)を決めた与太は、男に対して真正面に向き直った。

大小の刀——二本差しの武家の男には到底敵わぬであろうが、一応餓鬼(がき)の頃より町家の道場で剣術(やっとう)の稽古はしてきた。

(ふところ)にはいつも、我が身を守るための匕首(あいくち)を忍ばせている。文字どおり、懐刀だ。

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