大江戸ガーディアンズ
「おまえは……『南町』の手先もやっておるそうだな」
鳶や火消しと同様、奉行所の下っ引きをやっていることは別段隠していることではない。
大っぴらにしているわけではないだけであって、尋ねられれば正直に身を明かす。
ゆえに、与太はこくりと肯いた。
「某は『北町』の同心で島村と申す」
——やっぱり、同心ってか。
北町奉行所の同心であらば、南町奉行所の手先であってもまだまだしがない下っ引きが、その顔を知るはずがない。
——じゃあ、なんで……
『北町』の同心の旦那が、おいらなんかを付け狙うってんだい。
みるみるうちに与太の顔が訝しげになる。
一昔前と違い、今では互いに行き来もするようになり、ずいぶんと風通しが良くなったとは云うものの……
相変わらず南北の奉行所は「捕物」を巡って鎬を削る仲であることに変わりはない。
「与太、おまえの評判は『北町』の手先連中から聞いておる」
確かに与太は、北町の息のかかった岡っ引き・下っ引き連中にも愛想良く入っていって世間話ができる。
実は、さように見せかけておいて、向こうが掴んだ「手掛かり」を探っているのだが。