大江戸ガーディアンズ

「——我らが生まれた頃であらば、()の北町の『隠密』はまだ存命であらぬか」

「あぁ、さようでござるな。確か名は……」

主税は頭の中で「書物」を(めく)っているかのごとく遠い目をした。

「『島村 尚之介(しょうのすけ)』と云ったか……」

「『島村』と申すのか」

兵馬はカッと目を見開いた。

「さようでござる。
ただ、今は『島村 勘解由(かげゆ)』と名を改めておるそうだがな」

主税ははっきりと思い出したようだ。


その名は——

島村 広次郎の叔父で、今では養子先の養父(ちち)となった者の名であった。

< 67 / 316 >

この作品をシェア

pagetop