大江戸ガーディアンズ
幼き頃、主税は父親・本田 政五郎に命じられるがまま剣術道場に入った。
其処にいたのが、又従兄であり後に朋輩にもなった松波 兵馬だった。
兵馬には弟がいて、いつも兄の後ろにくっついて道場にやってきていたが、なにぶん幼過ぎるがゆえ、まだ稽古は付けてもらえずにいた。
一人っ子だった主税も、その又従弟をまるで我が弟のごとく可愛がった。
きちっと正座し、兄の云い付けどおりに些かも身動ぎせず、じっと前を見据える——されど、まだ稚き面立ちを見ていると……
無性に憐憫の情が湧き上がってきて、思わずその頭を「ぽんぽん」として労ってやった。
するとその刹那、はっとして棗のごとき大きな目を見開いたかと思うと、恥ずかしそうにはにかみながら目を伏せるのだ。
主税の方も、いつも朋輩から「鋭き眼差しゆえに睨んでいるとしか思えぬ」と揶揄われる切れ長の目が、知らず識らずのうちに緩んでいた。
さらに、いつも引き締まっていて崩れることのない口元にも、自ずと笑みが浮かんでいた。