大江戸ガーディアンズ
「何用じゃ」
畳にひれ伏したままの千賀を慮って、障子を閉めたまま主税が問うと、
「奉行所より遣いの者が参っておりまする」
和佐から返ってきた。
「何用でござるか」
おそらく縁側の外にいるであろう遣いの者へ向けて、主税は声を張り上げた。
「へぇ、本田様、朝早うから御免なすって。
昨夜また吉原で『髪切り』が出やして……」
庭先に控えていた奉行所からの中間が応じた。
「なんだとっ」
そのとたん、主税の眠気が吹っ飛んだ。
流石に千賀も畳からむくりと起き上がる。
主税は脇息から立ち上がると座敷の入り口へ向かい、障子をすぱーんと開けた。
「何処の見世でござるか」
「へぇ、此度は丁子屋でござんす」
「……また大見世か」
主税は、ぎりり、と奥歯を噛み締めた。
「すぐさま奉行所へ戻る。
和佐、急げ。出仕の支度をするぞ」