大江戸ガーディアンズ

「それにしてもよ……
『髪切り』は何故(なにゆえ)、廓の妓ばかりの髪を狙うんでぃ」

兵馬は不思議でしようがなかった。


「すいやせん、松波様。
『髪切り』のこたぁ、島村の旦那のことも合わせてまだ何の手掛かりも(つか)めてねえんでさ」

与太は申し訳なさのあまり、小さくなった。


「そうか……そいだったら……もう、仕方ねえな」

兵馬は残念そうにつぶやいたが、すぐに気を取り直した。

すると、顔付きががらりと武家の()れになり——口調が改まった。


「御公儀の威信にかけて、なんとしても『髪切り』を捕縛せねばならぬ。
よって、此度(こたび)南北の奉行所が手を取り合って捕物にあたることと相成(あいな)った」

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