大江戸ガーディアンズ

『……面目のうござる』

父親似である兵馬の端正な面持(おもも)ちが、大きく歪んだ。

『ふん、ざまぁねえな』

父は息子を鼻で笑った。

『いいか、兵馬。
奉行所(うち)の方としてはよ、松葉屋や扇屋に加えて丁子屋にまで得体の知れねぇ「髪切り」なんてのに(へぇ)られちまった以上、もう四の五の()ってらんねぇのよ』

兵馬は忸怩たる思いで目を伏せた。

『町家の連中が「奉行所(おかみ)は何してやがんのさ」()ってうるせぇしな。
それに、御奉行様も「過去に手詰まりになった折に幾度(いくたび)か試みられてる方策を、そろそろ(おこな)う時期ではあるまいか」と仰せになってっしよ』

——まさか……

『よっぽど巧く立ち回らねぇと、奉行所全体が赤っ恥をかいて失敗(しく)じっちまう『戦法』だけどよ』


『隠密廻りの同心を忍ばせて……「(おとり)」に立てる策にてござるか』

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