アイの色を教えて。
茜色の美術室。
誰も居ない美術室。
静まり返ったその場に、筆の動く音や絵の具の出すほんの小さな音だけが響く。
その感覚が好きだった。
世界がまるで自分だけになったような、そんな感覚。
でも、現実というのは案外酷いもので。
「なぁ 、今日帰りにコンビニ寄らね?」
「わりぃっ俺バイトなんだわ!」
「ねぇ、ゲーセン行こうよ!」
「いいね!プリ撮りまくろー!」
残念ながら、この世界の主役は僕じゃない。
顔も描いてもらえない、クラスの端っこにいるモブなんてのが最適だろう。
楽しそうな声が行き交う中、1人鞄を背負って教室を後にする。
あの雰囲気は僕には重すぎて。
あれ以上長くあそこにいると胃もたれしてしまいそうだった。