アイの色を教えて。

茜色の美術室。



誰も居ない美術室。



静まり返ったその場に、筆の動く音や絵の具の出すほんの小さな音だけが響く。




その感覚が好きだった。




世界がまるで自分だけになったような、そんな感覚。






でも、現実というのは案外酷いもので。






「なぁ 、今日帰りにコンビニ寄らね?」




「わりぃっ俺バイトなんだわ!」




「ねぇ、ゲーセン行こうよ!」




「いいね!プリ撮りまくろー!」





残念ながら、この世界の主役は僕じゃない。




顔も描いてもらえない、クラスの端っこにいるモブなんてのが最適だろう。




楽しそうな声が行き交う中、1人鞄を背負って教室を後にする。



あの雰囲気は僕には重すぎて。




あれ以上長くあそこにいると胃もたれしてしまいそうだった。






< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop