病の君へ
お風呂を出ると、いつも空がソファに座ってこっちを向いて、笑う。

そのあといつも、髪乾かさないとダメじゃんって言ってくれる。

もしかしたら他の人の心臓が移植されてて、これはドッキリかも。

なにかよくわからない期待を胸に、頭を乾かさずにリビングに向かう。

でもテレビはついていないし、いつもソファに座っている愛しい人はいなかった。

代わりに空がいつも使っている香水が、朝使って戻し忘れて、そのまま家を出たかのようにちょこんと置いてあった。
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