夢の中でもう一度
だから今、ミケを失って僕は生きたくなくなってしまっている。

朝は寝坊すけなミケを起こすためにアラームをかけていた。

僕だって朝は得意な方じゃない。

ミケがいなくなった今アラームはかけていない。

夢でミケに会うために何度も寝ようと試みる。

しかし現実が僕を導いてはくれない。

ミケに怒られてしまうほど酒を飲み、ベランダでミケを思い出すだけでただ一日が終わる日もある。

ミケは僕のスーツ姿が好きだった。

もう僕のネクタイを結ぶミケはいない。

僕はネクタイの結び方すら忘れている。

料理がもっぱら苦手なミケはいつも僕が作るお弁当のおかずを当てるゲームをしていた。

匂いだけでおかずを当てる。

ミケはこのゲームが恐ろしく強かった。



“卵焼き!今日はしらすが入ってるの?”



そんな声が今日も聴こえる気がする。

仕事終わりは待ち合わせをして一緒に帰った。

美味しそうなおかずは買い食いして食べた。

ズボラなミケは髪を乾かさない。

ミケの髪を乾かすのは僕の役割だった。

僕はミケのふわふわの髪を触れる特権を持っていた。

お笑い番組は二人で大笑いした。

ドラマを見ながら泣く僕をミケは笑った。

喧嘩した日は僕がプリンを買って帰る。

僕の誕生日にミケが作ってくれる焦げ焦げのハンバーグが大好物だ。

僕はもう大好物を食べることはない。

ミケの大好物を作れば帰ってくる気がして2人分作ってしまう。

ベランダに出ればミケが眠ってる気がして探してしまう。

公園に行けばミケに会える気がして1人でミケの面影を辿ってしまう。

ミケ、ミケ、ミケ。

何をするにもミケで、僕はまだミケのいない世界に馴染めていない。
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