また、君と笑顔で会える日まで。

進級

望月穂波side

4月だというのにもうこんなに暑いのか。


地球温暖化は間違いなく進行している。


むしろ、進行しすぎている。このままじゃあと数十年後には4月の時点で35度とか超えてそう。


……ってそれはいくらなんでもありえない。


高校二年生に進級し、昇降口に掲示されている自分の名前を確認した後教室に向かう。

「あっ、穂波また同じクラスじゃん!よろしくー!」

教室の中に足を踏み入れると、1年の時に同じクラスだった日野森志歩と小豆沢こはねがブンブンと大きく手を振った。

「よろしく〜!」

大きくてを振り返して黒板に張り出されている座席表を確認してから自分の席に向かう。


窓際の後ろから2番目の席。


周りの子はみんな友達同士でグループになりおしゃべりしているのに、あたしの後ろの席の子はひっそりと席に座り何やら俯いている。


どうしたんだろう。具合でも悪いんだろうか。


椅子に手をかけて引いた時に気づいた。


彼女に見覚えがある。


心臓がドクンッとなった。


このこ知ってる。絶対にこの子だ。忘れもしない。


あたしの恩人──!!

「……──!!」

椅子を引く手を引っこめるタイミングを逸して後ろの机にぶけてしまった。


彼女は驚いたのか、体をビクッと震わせた。

「あ、ごめんごめん!あたし、力ありあまってて」
「いえ、大丈夫です」

ほんの少しだけ顔を上げたものの、あたしと目を合わさずに小さな声で答えると再び机に視線を落としてしまった。

「あたし達って同い年なんだし敬語やめようよ」

椅子の背もたれを抱きしめるように後ろ向きに座って俯く彼女の顔を覗き込む。


彼女はあたしの視線から逃れるように更に俯いてしまった。

『よかったらこれ使ってください』

あの時、あの瞬間、あたしは彼女のその声と優しさに救われた。


もうダメかもしれないと心が折れそうになっていたあたしに彼女はそっと救いの手を差し伸べてくれたのだ。


きっとこの様子じゃ彼女は覚えていないんだろう。


だけど、あたしは覚えてる。ちゃんと覚えてる。

「ははっ!そんなかたくなにいやがんないでよ!」

とあたしはケラケラと明るい声で言った。


彼女と同じクラスになり、前後の席になれた。


今考えればきっと神様からの、最初で最後の人生最高のプレゼントだったに違いない。



< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop