また、君と笑顔で会える日まで。
天馬紗希side
その日から彼女は度々私に声をかけてくるようになった。
最近では、彼女は私のことを『さきさき』ではなく『紗希』とよび、私は彼女のことを『穂波ちゃん』と呼んでいる。
穂波ちゃんは「ちゃんづけしなくていいよ〜!同い年なんだから!」と言っていたけど、そんな簡単に呼べるはずもない。
そもそも私と穂波ちゃんが言葉を交わしているだけで、穂波ちゃんのグループの子たちが不愉快そうな顔をしているのにきづいていたから。
彼女がどうして私に声をかけてくるのか全く理解できないけれど、ひとつだけ断言できることがある。
彼女は私だから声をかけてくるんじゃない。
自分が声をかけたいと思ったタイミングで誰にだって声をかけるのだ。
それはもう自然に。誰とでも平気な顔で会話をしている。
それにしても。
授業が始まると早々に前の席に座る彼女は綺麗な髪を揺らしながら船を漕ぎ始めた。
授業中、寝ていることも多いのに何故かテストの結果は毎回学年一位だったりするから不思議だ。
放課後は学校の先生にバレないようにコンビニで22時までバイトもしているらしいし、一体いつ勉強しているのか不思議だ。
授業が終わると彼女はすっきりとした顔つきで振り返り唐突に言った。
「ねぇ、紗希のライン教えてよ」
「ライン?」
「そうそう。交換してなかったじゃん?」
「してなかったけど、どうして……?」
「今思いついたの。してなかったなぁって。そうすれば学校以外でも連絡取り合えるじゃん?」
学校以外でも彼女は私と連絡を取り合う気なんだろうか?
……一体、なんで?
だって彼女には私と違って友達がたくさんいるし、私と連絡を取り合う必要があるとは到底思えない。
「ほらっ、早く、ID?それともコード?」
「えっ、ちょっと待って。ID?こおど?」
私、とても16歳とは思えない。
ここ数年間誰かとライン交換なんてしていないし、する機会もなかったし、どうやって交換するのかすらさっぱり忘れていた。
画面を目に近づけて眉間に皺を寄せながら「えっと、えっと、ここじゃなくて……」焦って独り言を呟きながらディスプレイを指でタップする。
「ちょっとちょっと!!なんか老眼でよく画面が見えないおばあちゃんみたいだけど大丈夫?」
「ごめん!こういうの慣れてなくて」
そう言ってからちょっぴり恥ずかしくなる。
穂波ちゃんにとってはライン交換なんて挨拶のようなものだろうし、こんな簡単な操作すらすぐにできない私に心底ドン引きしているに違いない。
「えっと、こっちじゃなくて……」
焦っているせいでさっきからトークとホーム画面を行ったり来たりしてしまっている。
私は彼女の目にどんなふうに映っているんだろう。
もしかしたら、彼女の機嫌を損ねてしまうかもしれない。
そしたらまた、私は──。
「貸してみ?」
「え?」
「そういうの、あたし得意だから。今後も使うと思うし教えてあげるよ」
穂波ちゃんはそういうと手のひらを上に向けた。
私は彼女の手のひらにはスマホを預けた。
「ホーム画面開くでしょ?で、この右上のこの人間に+のマークがついたところを押すとほら、友達追加できるでしょ?」
「なるほど」
「ってことで、あたしがQRコード読み取るね!」
穂波ちゃんが素早い動きで自分のスマホ画面を読み込み、友達追加を終えた。
家族と親戚の名前しか並んでいないトーク画面に『望月穂波が友達に追加されました』と表示されている。
友達が追加された。
友達、友達、友達。
何度も頭の中で繰り返していると叫び出したくなってきた。
──あたし、友達ができたの……??
そんな気持ちをぐっと堪えて穂波ちゃんに「ありがとう」とお礼を言った。
「ん?あたし、お礼言われるようなことしたっけ?」
穂波ちゃんは私とは目を合わさずスマホ画面を見つめながらものすごい勢いで指を動かしていた。
数秒後、『穂波でーす!よろしくねー』というメッセージに続きかわいいスタンプが送られてきた。
『よろしくお願いします』
という女の子がプレートを掲げて微笑むスタンプはどこか穂波ちゃんににていた。
『紗希です。こちらこそよろしくお願いします』
返信すると、ブハッと目の前の穂波ちゃんが吹き出した。
何がおかしいのか穂波ちゃんはゲラゲラと笑い続ける。
「あはははは!紗希、最高!てかなんか言い方が固いんだよなぁ〜!なんでそんな他人行儀なのよ!」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。あたしたちってもう友達でしょ?敬語なんて使わないでよ!ってあたし、このセリフ何回言ったかわかんないんだけど!多分、もう30回は言ったよ!?」
「そ」
「ん?」
「そんなには言ってない……と思う」
多分まだ10回目くらい。
「あはははは!やっぱり紗希って面白いわぁ〜!」
私には何が面白いのかさっぱりわからなかったけど、ちゃんは心底楽しそうに笑う。
「おーい、穂波〜!次、移動教室〜!」
背後で穂波ちゃんのグループの子が彼女に向かって叫んだ。
「了解〜!あたし、紗希と行くから先行ってて〜!!」
穂波ちゃんはグループの子にぶんぶんと手を振る。
穂波ちゃんと仲良しの日野森さんと小豆沢さんが驚いた様子でこちらを見ている。
それに気づいていないのか、穂波ちゃんは再び私の方に向き直った。
女の勘が働く。多分、これはまずい状況だ。
「穂波ちゃん、大丈夫なの?」
「えー、なにがぁ?」
「友達、先に行っちゃうよ?」
「なんで。ダメ?」
「ダメってことはないけど友達と一緒に行った方がいいんじゃないかな?私は一人で行けるし」
むしろ、高校に入学してから誰かと一緒に移動教室に向かったことは一度もない。
「今から追いかければ、まだ間に合うかもしれないよ?」
彼女の背中を押す。
女の友情はあっけなく壊れるということを私は身をもって体験してきた。
穂波ちゃんはこういう性格だし、スクールカーストの頂点に立っている。
そんな彼女ならハブられたりイジメられたりすることもないかもしれない。
だけど、やっぱり気になる。
穂波ちゃんが私のようになったら、いやだ。
彼女にはいつも笑顔でいてほしい。
だって、彼女は私のような人間にも分け隔てなく声をかけてくれる優しい人だから。
「あたしは紗希と行くよ」
「でも……」
「言ったじゃん。紗希だってあたしの友達だもん。
その理由だけじゃ、ダメ?」
私の顔を覗き込んで大きな目をぱちくりさせながら尋ねる穂波ちゃんに私は首を横に振った。
「ダメじゃないよ」
ダメなんかじゃなくて、むしろ逆。私は嬉しかったのだ。
彼女のその言葉が。
『友達』と言ってもらって泣きそうなほど嬉しかった。
「ま、ダメって言われてもあたしは聞かないけどね?」
そう言って穂波ちゃんは口の端をクイっと上に持ち上げて得意げに笑った。
「紗希さー、なんでいつも一人でいるの?」
次の授業は生物だ。
生物室へ向かう道中、穂波ちゃんはさらりとそう尋ねた。
「それは……」
「一人でいたいタイプには思えないんだけど」
「一人でいたいっていうか……どうしても一人になっちゃうっていうか……」
「本当は一人になりたくないんでしょ?って、聞かなくてもわかる。誰だってひとりぼっちは嫌だもん。そんなの淋しいよ」
穂波ちゃんはそう言って肩をすくめた。
「もしかして昔、色々あった系?」
「うーん、そんな感じ……かな?」
困ったように笑うと、穂波ちゃんは「そっか」と言ったきりそれ以上追及してこなかった。
見境なく他人の領域に踏み込んでくるかと思っていたから少しだけ意外だった。
「まぁ、人間だしいろいろ悩みとか他人に言えないこととかあるよね」
「……穂波ちゃんにもそういうことあるの?」
ないだろうな、と思いながらも聞いてみた。
順風満帆を絵に描いたような生活をしているであろう彼女にそんな悩みがあるとは思えない。
ルックスはパーフェクトだし、学力は申し分ないし、運動だってできる。
社交的でコミュ力が高くて友達も多い。
彼女の周りはいつも人が絶えず、輪の真ん中でいつだって楽しそうに笑顔を浮かべている。
穂波ちゃんはそういう人だ。例えるならば、周りを明るく照らす太陽みたいな人。
「あるよ、あたしにもそういうこと。毎日悩んでばっかりだもん」
「え」
意外な返答に面食らっている私に気づいて穂波ちゃんは唇を尖らせる。
「さては、その反応!ないと思ったんだろー!!」
「だ、だって、穂波ちゃんが悩んでる姿って想像ができないから」
「そう〜?実は夜な夜なベッドの中で一人こっそり声を押し殺して泣いてるかもよ?」
「……まさか」
「なんてね〜!まぁ、色々あるけどそれなりに楽しく生きようとしてます〜」
「それなりには見えないなぁ。相当楽しそうだよ?」
「えー、そう?あたし、幸せそうに見える?」
「うん。とっても」
いつだって笑顔で明るくて楽しそうで。私にとっては太陽のように眩しいぐらいだ。
「そっかそっか。それならよかった」
にこりと笑った彼女に私もつられれ微笑んだ。
「紗希は笑った方が可愛いよ」
「え……」
「笑うと幸せになれるんだって。だからね、あたしは笑うんだ。幸せになるために。辛いことがあったって絶対に笑うの」
そう言って微笑んだ穂波ちゃんは何故かほんの少しだけ悲しそうな目をしていた。
その日から彼女は度々私に声をかけてくるようになった。
最近では、彼女は私のことを『さきさき』ではなく『紗希』とよび、私は彼女のことを『穂波ちゃん』と呼んでいる。
穂波ちゃんは「ちゃんづけしなくていいよ〜!同い年なんだから!」と言っていたけど、そんな簡単に呼べるはずもない。
そもそも私と穂波ちゃんが言葉を交わしているだけで、穂波ちゃんのグループの子たちが不愉快そうな顔をしているのにきづいていたから。
彼女がどうして私に声をかけてくるのか全く理解できないけれど、ひとつだけ断言できることがある。
彼女は私だから声をかけてくるんじゃない。
自分が声をかけたいと思ったタイミングで誰にだって声をかけるのだ。
それはもう自然に。誰とでも平気な顔で会話をしている。
それにしても。
授業が始まると早々に前の席に座る彼女は綺麗な髪を揺らしながら船を漕ぎ始めた。
授業中、寝ていることも多いのに何故かテストの結果は毎回学年一位だったりするから不思議だ。
放課後は学校の先生にバレないようにコンビニで22時までバイトもしているらしいし、一体いつ勉強しているのか不思議だ。
授業が終わると彼女はすっきりとした顔つきで振り返り唐突に言った。
「ねぇ、紗希のライン教えてよ」
「ライン?」
「そうそう。交換してなかったじゃん?」
「してなかったけど、どうして……?」
「今思いついたの。してなかったなぁって。そうすれば学校以外でも連絡取り合えるじゃん?」
学校以外でも彼女は私と連絡を取り合う気なんだろうか?
……一体、なんで?
だって彼女には私と違って友達がたくさんいるし、私と連絡を取り合う必要があるとは到底思えない。
「ほらっ、早く、ID?それともコード?」
「えっ、ちょっと待って。ID?こおど?」
私、とても16歳とは思えない。
ここ数年間誰かとライン交換なんてしていないし、する機会もなかったし、どうやって交換するのかすらさっぱり忘れていた。
画面を目に近づけて眉間に皺を寄せながら「えっと、えっと、ここじゃなくて……」焦って独り言を呟きながらディスプレイを指でタップする。
「ちょっとちょっと!!なんか老眼でよく画面が見えないおばあちゃんみたいだけど大丈夫?」
「ごめん!こういうの慣れてなくて」
そう言ってからちょっぴり恥ずかしくなる。
穂波ちゃんにとってはライン交換なんて挨拶のようなものだろうし、こんな簡単な操作すらすぐにできない私に心底ドン引きしているに違いない。
「えっと、こっちじゃなくて……」
焦っているせいでさっきからトークとホーム画面を行ったり来たりしてしまっている。
私は彼女の目にどんなふうに映っているんだろう。
もしかしたら、彼女の機嫌を損ねてしまうかもしれない。
そしたらまた、私は──。
「貸してみ?」
「え?」
「そういうの、あたし得意だから。今後も使うと思うし教えてあげるよ」
穂波ちゃんはそういうと手のひらを上に向けた。
私は彼女の手のひらにはスマホを預けた。
「ホーム画面開くでしょ?で、この右上のこの人間に+のマークがついたところを押すとほら、友達追加できるでしょ?」
「なるほど」
「ってことで、あたしがQRコード読み取るね!」
穂波ちゃんが素早い動きで自分のスマホ画面を読み込み、友達追加を終えた。
家族と親戚の名前しか並んでいないトーク画面に『望月穂波が友達に追加されました』と表示されている。
友達が追加された。
友達、友達、友達。
何度も頭の中で繰り返していると叫び出したくなってきた。
──あたし、友達ができたの……??
そんな気持ちをぐっと堪えて穂波ちゃんに「ありがとう」とお礼を言った。
「ん?あたし、お礼言われるようなことしたっけ?」
穂波ちゃんは私とは目を合わさずスマホ画面を見つめながらものすごい勢いで指を動かしていた。
数秒後、『穂波でーす!よろしくねー』というメッセージに続きかわいいスタンプが送られてきた。
『よろしくお願いします』
という女の子がプレートを掲げて微笑むスタンプはどこか穂波ちゃんににていた。
『紗希です。こちらこそよろしくお願いします』
返信すると、ブハッと目の前の穂波ちゃんが吹き出した。
何がおかしいのか穂波ちゃんはゲラゲラと笑い続ける。
「あはははは!紗希、最高!てかなんか言い方が固いんだよなぁ〜!なんでそんな他人行儀なのよ!」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。あたしたちってもう友達でしょ?敬語なんて使わないでよ!ってあたし、このセリフ何回言ったかわかんないんだけど!多分、もう30回は言ったよ!?」
「そ」
「ん?」
「そんなには言ってない……と思う」
多分まだ10回目くらい。
「あはははは!やっぱり紗希って面白いわぁ〜!」
私には何が面白いのかさっぱりわからなかったけど、ちゃんは心底楽しそうに笑う。
「おーい、穂波〜!次、移動教室〜!」
背後で穂波ちゃんのグループの子が彼女に向かって叫んだ。
「了解〜!あたし、紗希と行くから先行ってて〜!!」
穂波ちゃんはグループの子にぶんぶんと手を振る。
穂波ちゃんと仲良しの日野森さんと小豆沢さんが驚いた様子でこちらを見ている。
それに気づいていないのか、穂波ちゃんは再び私の方に向き直った。
女の勘が働く。多分、これはまずい状況だ。
「穂波ちゃん、大丈夫なの?」
「えー、なにがぁ?」
「友達、先に行っちゃうよ?」
「なんで。ダメ?」
「ダメってことはないけど友達と一緒に行った方がいいんじゃないかな?私は一人で行けるし」
むしろ、高校に入学してから誰かと一緒に移動教室に向かったことは一度もない。
「今から追いかければ、まだ間に合うかもしれないよ?」
彼女の背中を押す。
女の友情はあっけなく壊れるということを私は身をもって体験してきた。
穂波ちゃんはこういう性格だし、スクールカーストの頂点に立っている。
そんな彼女ならハブられたりイジメられたりすることもないかもしれない。
だけど、やっぱり気になる。
穂波ちゃんが私のようになったら、いやだ。
彼女にはいつも笑顔でいてほしい。
だって、彼女は私のような人間にも分け隔てなく声をかけてくれる優しい人だから。
「あたしは紗希と行くよ」
「でも……」
「言ったじゃん。紗希だってあたしの友達だもん。
その理由だけじゃ、ダメ?」
私の顔を覗き込んで大きな目をぱちくりさせながら尋ねる穂波ちゃんに私は首を横に振った。
「ダメじゃないよ」
ダメなんかじゃなくて、むしろ逆。私は嬉しかったのだ。
彼女のその言葉が。
『友達』と言ってもらって泣きそうなほど嬉しかった。
「ま、ダメって言われてもあたしは聞かないけどね?」
そう言って穂波ちゃんは口の端をクイっと上に持ち上げて得意げに笑った。
「紗希さー、なんでいつも一人でいるの?」
次の授業は生物だ。
生物室へ向かう道中、穂波ちゃんはさらりとそう尋ねた。
「それは……」
「一人でいたいタイプには思えないんだけど」
「一人でいたいっていうか……どうしても一人になっちゃうっていうか……」
「本当は一人になりたくないんでしょ?って、聞かなくてもわかる。誰だってひとりぼっちは嫌だもん。そんなの淋しいよ」
穂波ちゃんはそう言って肩をすくめた。
「もしかして昔、色々あった系?」
「うーん、そんな感じ……かな?」
困ったように笑うと、穂波ちゃんは「そっか」と言ったきりそれ以上追及してこなかった。
見境なく他人の領域に踏み込んでくるかと思っていたから少しだけ意外だった。
「まぁ、人間だしいろいろ悩みとか他人に言えないこととかあるよね」
「……穂波ちゃんにもそういうことあるの?」
ないだろうな、と思いながらも聞いてみた。
順風満帆を絵に描いたような生活をしているであろう彼女にそんな悩みがあるとは思えない。
ルックスはパーフェクトだし、学力は申し分ないし、運動だってできる。
社交的でコミュ力が高くて友達も多い。
彼女の周りはいつも人が絶えず、輪の真ん中でいつだって楽しそうに笑顔を浮かべている。
穂波ちゃんはそういう人だ。例えるならば、周りを明るく照らす太陽みたいな人。
「あるよ、あたしにもそういうこと。毎日悩んでばっかりだもん」
「え」
意外な返答に面食らっている私に気づいて穂波ちゃんは唇を尖らせる。
「さては、その反応!ないと思ったんだろー!!」
「だ、だって、穂波ちゃんが悩んでる姿って想像ができないから」
「そう〜?実は夜な夜なベッドの中で一人こっそり声を押し殺して泣いてるかもよ?」
「……まさか」
「なんてね〜!まぁ、色々あるけどそれなりに楽しく生きようとしてます〜」
「それなりには見えないなぁ。相当楽しそうだよ?」
「えー、そう?あたし、幸せそうに見える?」
「うん。とっても」
いつだって笑顔で明るくて楽しそうで。私にとっては太陽のように眩しいぐらいだ。
「そっかそっか。それならよかった」
にこりと笑った彼女に私もつられれ微笑んだ。
「紗希は笑った方が可愛いよ」
「え……」
「笑うと幸せになれるんだって。だからね、あたしは笑うんだ。幸せになるために。辛いことがあったって絶対に笑うの」
そう言って微笑んだ穂波ちゃんは何故かほんの少しだけ悲しそうな目をしていた。