世界で一番大嫌いな君へ
ましろは手で口元を覆いながらクスクスと笑う。綺麗なネイルアートが施されたその手を見ていた凌は、あることに気付いて心臓がドクンと跳ねる。ましろの左手の薬指に、ダイヤモンドの指輪が嵌められていた。

「ましろ、その指輪……」

嫌だ、聞きたくない、そう思っても凌は気になり訊ねてしまう。イタズラであってほしい、友達から貰ったものであってほしい、そう願う凌だったが、ましろは幸せそうに頰を赤く染める。その顔は、恋をしている時の人の顔だ。ましろをずっと好きな凌は嫌でもわかる。

「凌ちゃん!私、結婚することになったの!」

その言葉に、凌は殴られたような衝撃を覚えた。しかし、ましろは全く気付いていないようで凌の目の前の椅子に座り、楽しそうに結婚相手との出会いから話し始めた。だが、凌の耳にはほとんど聞こえてこない。

気が付けば凌は自分の部屋のベッドで横になっていた。どうやって帰って来たのか、あまり覚えていない。だが、とても悔しいという気持ちが心の中にあった。
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