世界で一番大嫌いな君へ
まだ全然食べてないじゃない、と母が怒る。凌は「ごめん」と謝った後、騒つく心を少しでも落ち着かせたいと思い自室へ行こうとした。その背中に声をかけられる。

「凌、結婚式に出席するのかしないのか、返事は早めに出せよ」

「……わかってるよ、父さん」

ましろの結婚はドッキリではない。現実だ。どんなに凌が想っていても、ましろはそれに気付くことなく他の誰かと同じ苗字になり、同じ家で暮らしていく。

「クソッ!」

ドンドンとわざと大きな音を立てて階段を登り、自室のドアを乱暴に閉める。そして、先ほどまで寝ていたベッドの上に勢いよく飛び込んだ。

「ましろになんて、最初から出会わなきゃよかったんだ……」

頰を涙で濡らしながら、凌は呟いた。



二週間後、凌は結婚式の招待状に返事を出せずにいた。他の共通の友達やましろ本人から「招待状届いた?」とLINEが届くものの、それにすら返信することが億劫で、スマホの電源を切る。

「ハァ……」
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