世界で一番大嫌いな君へ
ましろの目から溢れていく涙を見て、言葉を聞いて、凌の目が見開かれる。ずっと長く一緒にいたからこそわかる。痛いほどわかるのだ。ましろが、本気で相手を愛しているということを。彼に相応わしい大人の女性になりたいということを。

「酷いこと、たくさん言っちゃった……。そんなこと一ミリも思ってないのに!嫌われちゃったかもしれない……。どうしよう……!」

刹那、凌の胸に失恋をしたとわかった時よりも大きな痛みが走る。まるで、縛られて水の中に突き落とされたような苦しみと、心臓を抉り出されるような痛みが凌を襲う。しかし、この痛みが何かすぐにわかった。

(ましろが泣いているから、こんなにも痛くて苦しい……?)

ましろが泣けばいい、そう思っていた。泣いて、縋ってきた時、優しくして、名前しか知らない男から奪えると凌は心のどこかで思っていたのかもしれない。だが、ましろの涙を見ていると、ただ苦しいだけだった。

(俺が、今ましろにしてやれるのはーーー……)
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