世界で一番大嫌いな君へ
凌の目の前がゆっくりとぼやけていく。そんな中、凌はましろをゆっくりと抱き締めた。初めて抱き締めたその温もりが、泣いてしまうほどほど愛しい。

「……ましろが本気でそんなことを言う人じゃないって、きっと婚約者は知ってるんじゃないか?優しくて、明るくて、真っ直ぐで、よく笑って、そんなましろが心から酷いことを言う人だなんて、誰も思わない。幼なじみの俺が保証する!」

「凌ちゃん……」

幼なじみとして終わりたくなかった。だが、凌は息をゆっくりと吐いて覚悟を決める。ましろには笑っていてほしい、泣いてほしいなんて嘘だ、そう思いながら。

「俺さ、結婚式出席するよ。頑張って休み取る。ましろの選んだ相手、紹介してくれよ。だからもう泣くな。花嫁はさ、笑わなきゃダメだろ?」

「うん……!」

ましろはしばらく凌の腕の中で泣いた後、凌から離れてスマホで誰かと話していた。表情を見ただけで凌にはわかる。相手が喧嘩をした婚約者だということも。

最初は不安そうだった横顔が、徐々に明るくなっていく。そして、最後には大輪の花を咲かせた。
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