世界で一番大嫌いな君へ
ふと凌が空を見上げれば、もうすっかり日は暮れて、夜空には星が煌めき、月が優しく地面を照らしている。ふと、凌は足を止めた。

「……凌ちゃん?」

突然立ち止まった凌を、ましろは足を止めて不思議そうに見ている。彼女の青い瞳が、月に照らされて本物の宝石がまるでそこにあるかのように見える。凌は手が震えてしまうほどの緊張を覚えながら、息を吐き、口を動かす。

「月が、綺麗ですね」

ただの言葉ではなく、「愛してる」という気持ちを込めて凌はその言葉を口にした。だが、ましろは照れた様子も見せずに空を見上げ、楽しそうな声を上げる。

「本当だ!月、すごく綺麗!満月だね〜!」

凌の告白は伝わらなかった。ましろはいつもと変わらずニコニコと笑っている。違う、そういう意味じゃない、そう凌は言いたかった。だがましろの笑顔を見ていると、この関係が壊れるのを今になって恐れ始めている己がいることに気付く。

「……うん、本当に綺麗だね」
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