世界で一番大嫌いな君へ
月を見上げるましろを見つめながら、凌は呟く。その想いは、やはり届いていなかった。

二人は偶然にも受けたいと思い、受験した高校も同じだった。受けたのは互いの自宅から自転車で二十分ほどの距離にある総合学科の高校である。

「高校も一緒なんて、すごい偶然だね!」

「ああ」

同じブレザーを着て高校まで自転車を走らせる。高校でも合唱部に所属し、仲のいいまま時間があっという間に過ぎていった。その間、ましろに告白はできなかった。

「ましろ、お前進路どうすんの?」

三年生になった時、凌は訊ねた。凌は高校を卒業した後は就職しようと考えていた。

「えっと、神奈川にある大学を受けようかなって思ってる。どうしても行きたい大学なんだ」

凌たちの住んでいるところから神奈川は、新幹線を使わないと行けない距離だ。進路が別々になってしまうことに、凌の心の中に寂しさが生まれる。だが、ましろを縛る権利は誰にもない。

「そっか。受験、頑張れよ」
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