サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「ご迷惑では?」
「帰る方向が一緒だし、先生がお嫌でなければ」
「全然全然っ!むしろ大助かりですっ!」
「フフッ、では、こちらは破棄処分でいいかな?」
「はいっ!お願いします!!」
「安田、これをシュレッダーに頼む」
「はい」
事務の安田に手渡すと、環は深々と頭を下げた。
「有難うございますっ!宜しくお願いします!」
「荷物は?」
「院内にあります」
「じゃあ、荷物取りに行ったら一階の通用口の所に」
「はいっ」
もしかしたら特別に社員用の宿泊施設でも案内して貰えるかと淡い期待をしてたら、まさか送って貰えるだなんて。
環はダッシュで病院へと急いだ。
***
「お待たせしてすみませんっ」
「そんな走らなくても良かったのに」
財前は、はぁはぁと呼吸が乱れている環を見てくすっと笑った。
初めてみる財前の柔らかい表情に驚いた環。
ターミナル内を巡回している財前を何度か目にした事がある。
今日みたいに緊急で処置が必要な時などに。
けれど、常に険しい表情か澄ました顔しか見たことが無かった。
意外な一面を垣間見た環は、間近で見る素の財前を凝視してしまう。
仕事がオンモードの時はきっと責任という重圧を抱えているんだろうなぁと。
「俺の顔に何か?」
「あ、いえ……。スタッフが『極上のイケメン』だといつも言ってるもので、ついつい美顔に見惚れてました」
あながち嘘ではない。
普段は良く見てなかったから、イケメンなのか見る余裕がなかっただけ。
こうして間近で見ると、うんうん、納得だ。
「深夜に、それもこれから密室空間に二人きりになるのに、そんな事言うとどうなっても知りませんよ?」
「え?……あ、平気ですよ~。悪さ出来なくする急所、熟知してますから」