サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「えっ、お休み無しですか?」
「はい。……取る気になれば取れますが、『空港』という場所は、年中無休ですから」
「それはそうですけど……」
思いもしない返答に驚愕してしまった。
仕事には厳しい人だとは聞いていたが、これほどまでにストイックな人だとは思ってもみなくて。
「具合がよくない時とか、ちょっと調子が悪いなぁとか感じたら、いらして下さい。診察しますので」
踏み込んではいけない質問をしてしまい、申し訳なさに襲われたが……。
『本部長』という鎧を着ているだけで、この人も生身の人間なんだと知れた瞬間だった。
「俺も質問していい?」
「あ、はい、どうぞ」
「恋人は?休みの日は何して過ごしてるの?趣味とか、花嫁修業とか?」
完全に仕返しされたんだ、これ。
自分が聞いた質問をオウム返し状態で聞き返して来た。
「何故、医師を?人を救う仕事がしたくて?」
「っ……」
「得意料理は何?好きな音楽は?宝くじで一千万当たったら何に使う?」
うっわぁ~、こういう人なんだ、この人。
やられたら倍返しするタイプ。
さっきまでのイイ人認定は取り消しにしとこ、うん。
だけど、先に質問したのは私だから。
無視するのも失礼だし、こうして送って貰えてるのだから。
「恋人はいません、二か月前に別れました。休みの日は掃除洗濯買い物をしたり、友達と映画を観たり。三連休取れたら近場に一人旅に出かけます」
「へぇ」
「料理は苦手です。簡単なものしか作れません。医局の勤務医してた時は連日手術に追われていたので、ぶどうや鶏肉とか見ると、縫合の練習材料にしか見えなくて、笑えますよね」
「ぶどうが?……鶏肉は何となく分かるけど」
「小さい部分の薄皮状態のものを縫合するのって、かなりの技術が要るんですよ」
「へぇ」
「なので、休みの日は刃物も針も手にしないようにしてました」