サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
何故、座ってしまったのかは分からない。
別に彼女と話したかったわけでもないのに。
クリニック以外の施設に人気が殆どいないせいなのか。
クリニックの中に彼女しかいないからなのか。
夜遅くに女性が一人だけというのがほんの少し気になってしまった。
「財前さんはこの後も仕事ですか?」
「う~ん、どうしようか迷ってる所です」
「帰れるなら帰った方がいいですよ、たまには」
「……そうですね」
無意識に溜息が漏れ出した。
自分でも疲れてるのは把握してるから。
「自分も点滴して貰えます?」
「あっ、はい!大丈夫ですよ。疲労蓄積による治療ってことでいいですかね?」
「お願いします」
彼女は点滴が刺さってる状態で器用に準備し、枕に新しいタオルを掛けた。
「横になって下さい」
「先生は?」
「もうじき終わりますので」
「では、遠慮なく」
さっきまで彼女が横になっていたベッドに横になる。
左腕のYシャツを捲ると、彼女は自身の点滴針を抜いた。
無意識に視線で追ってしまう。
無駄な動きが無い。
「少しチクっとしますよ~」
右腕を額に当て、表情を読み取られないように隠す。
別に注射が嫌いとか痛いのが嫌いとかではなくて。
横になって点滴を受ける自分が弱ってるように思えて。
そんな自分を誰かに見られてると思うと、少し気恥ずかしいような気がして。
それに、誰かに見下ろされるもの嫌いだから。
「三十分用なので、二十三時前には終わりますから」
「………はい」
「カルテ作っておきますね」
「すみません」
彼女は毛布をそっと掛け、カーテンを静かに閉めた。