サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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「では、遊具の企画案は来週末までに。今日はここまでとする
「お疲れ様でした」
ターミナル内に設置されている幼児向けの遊具。
制限区域内外に設置されている遊具は定期的に入れ替えしていて、常に安全第一を最優先にしている。
一時間弱の戦略企画部の会議を終え、その足で格納庫へと向かう。
新しく導入した機種の点検が完了したと報告を受けたからだ。
「酒井」
「はい」
「新機種の確認が終わったら、今日は上がっていいぞ」
「え、でもまだ十八時ですし」
「もう十八時だ。たまには早く帰って子供と遊んでやれ」
「………有難うございます。では、お言葉に甘えてそうさせて貰います」
「ん」
酒井は俺より六歳上で、元々は父親の秘書をしていた。
俺が戦略企画部の本部長に就任する際に、右も左も分からないだろうからと酒井をつけてくれた。
年上とはいえ、立場を把握している彼は俺のサポートに徹し、彼のお陰でこの三年間乗り切れたと言っても過言ではない。
五年前に結婚し、昨年長男が生まれたばかり。
最近は歩くようになったと嬉しそうに話している。
俺も四年前までは結婚を意識して、将来は子供も欲しいと考えていたが。
眼病を患って以来、未来を考えることを諦めた。
明日失明するかもしれないのに、未来を考える余裕など俺には無い。
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「本部長、お先に失礼します」
「気を付けて……お疲れ様」
新機種の確認を終えた俺らはターミナル内に戻り、酒井はその足で退社した。